トインビー随想

トインビー博士について様々な話題を語ります

トインビー博士と創価学会 マクニールの見解

トインビー博士と創価学会の関係。特にトインビー博士と池田大作先生との対談の実現は、日本をはじめとして全世界に広がりつつあった創価学会のメンバーにとっては大きな感動を持って迎えられ、世界宗教をめざす自らの行動への強い励ましとなりました。この対談の発刊後、海外の識者、指導者からの評価は大きく変わり、その後の池田大作先生への世界の各大学からの名誉学術称号の授与(2019年11月現在、395)につながっていきます。創価学会の世界への展開、特に池田先生の海外での評価の基本として大きな意味を持ちました。

しかし、一方ではこの対談について否定的に論ずる評論家、学者、ジャーナリストも存在しました。特に、日本において顕著ですが、創価学会池田大作先生への先入観に基づく否定的な評価は根強く存在します。トインビー・池田会談は、自らの研究の結論から積極的に創価学会を評価し、対談を申し込む手紙を送られたトインビー博士のイニシアチブで実現したことは客観的な事実です。しかし、すでに世界的名声を得ていたトインビー博士がそのような“愚かな”ことをするはずがないとの先入観から、これも創価学会、池田先生批判の決まり文句ですが、創価学会が“金”の力でトインビー博士を動かした。すでに80歳を超え、耄碌が進行していたトインビー博士が判断を誤ったとの見方があります。

このような見解に、半分与しながら論じているのが、現在のところ唯一のトインビー博士の伝記を執筆しているアメリカの歴史家マクニールの見解です。マクニールは、アメリカの歴史学協会の会長も務めたことのあるアメリ歴史学会の重鎮で、彼の書いたベネティアの歴史は、通史として高く評価されていますし、日本においても彼の「世界史」は広く読まれています。トインビー博士に対しても、好意的な評価を下しており、そのような状況から、トインビー博士の周辺の人びとが、彼に伝記の執筆を依頼しました。その伝記が「ARNOLD  J . TOYNBEE    A  Life」で、1989年に O.U.P  OXFORD UNIVERSITY PRESS より出版されました。

この著作より、該当の部分を引用します。(日本語訳は仮に私がつけてみました)

  • From Toynbee's point of view,Soka Gakkai was exactly what his vision of the historical moment expected, for it was a new church, arising on the fringes of the “post-Christian ” world , appealing principally to an internal proletariat, and deriving part of its legitimacy from an ancient and persecuted  faith.  ....................................トインビーの視点からみて、創価学会はまさに、歴史的な時期としての(現在)に対する彼の洞察の中で期待していたものであった。それは新しい教会(→世界教会)であり、キリスト教の後の世界の周辺に立ち上がり、主に内的プロレタリアート(→社会構造の中に組み込まれてはいるがほとんど無権利状態におかれている人びと)にアピールし、その正当性は古い時代の迫害された信仰に由来する。
  • Comparisons with early Christian history fairly leap to mind ,and in a preface he wrote for the English translation of one of Ikeda's books Toynbee explicitely compared the world mission of Soka Gakkai with the Christian Church on the eve of its coming to power in the Roman Empire. ................創価学会と)初期キリスト教史との比較は、かなり心躍る経験であり、トインビーは英訳された池田の著作の一つ(小説「人間革命」)に書いた序文の中で、明示的に創価学会の世界宣教(mission)とローマ帝国内において勢力となる前夜のキリスト教教会を比較している。
  • When an Englishman living in Japan reproached* him for his association with Ikeda, Toynbee defend himself, writing: "I agree with Soka Gakkai on religion as the most important thing in human life, and opposition to miliitarism and war.".........................ある日本に住んでいるイギリス人がトインビーの池田に対する親密さを咎めて書いた手紙に対して、「私は創価学会が、宗教こそ人間の人生にとって最も重要であると言っていることに賛成するし、軍国主義と戦争に対して反対していることに賛成します」と返事を書いている。
  • To another remonstarance he replied:"Mr Ikeda's personality is strong and dynamic and such characters are often controversial.My own feeling for Mr.Ikeda is one of great respect and sympathy.".......................................他の諫言、いさめに対して彼は「池田氏の個性は強力で、ダイナミックでありそのような性格はたびたび物議を醸すことがある。私自身は池田氏に対して、偉大な尊敬と共感を感じている」と答えている。
このような引用から見えてくることは、トインビー博士が創価学会に対して、歴史家としてどのような観点から評価していたかということであり、ボードリアンのトインビー博士の手紙を根拠として執筆されたマクニールの見解が、トインビー博士の創価学会観、池田大作観について、ある程度正確に表現しているということです。